新潮文庫の100冊:2009
文庫本裏表紙より引用
野生の美しい生々しさに充ち満ちている「今昔物語」の価値を発見したのは、国文学者ではなく、実に芥川その人であった。本編は、陰影に乏しい古典の中の人間心理に近代的解釈を試みることによって、自らの主題を生かした"王朝もの"の第一集。善にも悪にも徹しきれない人間の姿を描いた『羅生門』、自然なユーモアと、整った文章によって漱石に絶賛された『鼻』など、8編を納める。
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文庫本裏表紙より引用
地獄に落ちた男が、やっとのことでつかんだ一条の救いの糸。ところが自分だけが助かりたいというエゴイズムのために、またもや地獄に落っこちる『蜘蛛の糸』。大金持ちになることに愛想がつき、平凡な人間として自然のなかで生きる幸福を見つけた『杜子春』。魔法使いが悪魔の裁きを受ける神秘的な『アグニの神』。少年少女のために書かれた、健康で明るく、人間性豊かな作品集。
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文庫本裏表紙より引用
松山中学在任当時の体験を背景とした初期の代表作。物理学校を卒業後ただちに四国の中学に数学教師として赴任した直情怪行の青年"坊ちゃん"が、周囲の愚劣、無気力などに反撥し、職をなげうって東京に帰る。主人公の反俗精神に貫かれた奔放な行動は、滑稽と人情の巧みな交錯となって、漱石の作品中最も広く愛読されている。近代小説に勧善懲悪の主題を復活させた快作である。
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日露戦争前夜、厳寒の八甲田山中で過酷な人体実験が強いられた。
神田大尉が率いる青森5聯隊は雪中で進退を協議しているとき、大隊長が突然"前進"の命令を下し、指揮系統の混乱から、ついには百九十九名の死者を出す。
少数精鋭の徳島大尉が率いる弘前31聯隊は二百十余キロ、十一日間にわたる全行程を完全に踏破する。
二隊を対比して、自然との闘いを迫真の筆で描いた人間ドラマ。
新潮文庫の100冊小冊子より
<硫黄島玉砕>のニュースが流れた四日後、ロサンゼルス・オリンピック馬術大障碍の優勝者・西中佐は、なお残存者を率いて戦っていた。
馬術という最も貴族的で欧米的なスポーツを愛した軍人の栄光と、豪胆さゆえの悲劇を鮮烈に描いて文藝春秋読者賞を受賞した表題作。
ほかに『基地はるかなり』『軍艦旗はためく丘に』など、著者の戦争体験と深くかかわった作品全七編を納める。
新潮文庫の100冊小冊子より
一瞬の閃光に町は焼きくずれ、放射能の雨のなかを人々はさまよい歩く。
原爆の広島-罪なき市民が負わねばならなかった未曾有の惨事を直視し、"黒い雨"にうたれただけで原爆症に蝕まれてゆく姪との忍苦と不安の日常を、無言のいたわりで包みながら、悲劇の実相を人間性の問題として鮮やかに描く。
被爆という世紀の体験を、日常の暮らしの中に文学として定着させた記念碑的名作。
新潮文庫の100冊小冊子より
島原の乱が鎮圧されて間もないころ、キリシタン禁制の厳しい日本に潜入したポルトガル人司祭ロドリゴは、日本人信徒達に加えられる残忍な拷問と悲惨な殉教のうめき声に接して苦悩し、ついに背教の淵に立たされる・・・。
神の存在、信仰の力、背教の心理、西洋と日本の思想的断絶など、キリスト信仰の根源的な問題を衝き、<神の沈黙>という永遠の主題に切実な問いを投げかける長編。
新潮文庫の100冊小冊子より
結納のため、札幌に向かった鉄道職員永野信夫の乗った電車は、塩狩峠の頂上にさしかかった時、突然客車が離れて暴走し始めた。
声もなく恐怖に怯える乗客。
信夫は飛びつくようにハンドブレーキに手をかけた・・・。
明治末年、北海道旭川の塩狩峠で、自らを犠牲にして大勢の乗客の命を救った一青年の、愛と信仰に貫かれた生涯を描き、生きることの意味を問う長編小説。
新潮文庫の100冊小冊子より
明治後期、部落出身の教員瀬川丑松は父親から身分を隠せと堅く戒められていたにもかかわらず、同じ宿命を持つ解放運動家、猪子連太郎の壮烈な死に心を動かされ、ついに父の戒めを破ってしまう。
その結果偏見にみちた社会は丑松を追放し、彼はテキサスをさして旅立つ。
激しい正義感をもって社会問題に対処し、目ざめたものの内面的相剋を描いて近代日本文学の頂点をなす傑作。
新潮文庫の100冊小冊子より
三十一歳で夭折した梶井基次郎。
彼の残した作品は、昭和文学史上の奇蹟として、その声価はいよいよ高い。
果実の異常な美しさに魅惑され、買い求めたレモンを洋書店の書棚に残して立ち去る『檸檬』、人間の苦悩を見つめて凄絶な『冬の日』、生き物の不思議を象徴化する『愛撫』ほか『城のある町にて』『闇の絵巻』など、得意な感覚と内面凝視で青春の不安、焦燥を浄化する二十編。
新潮文庫の100冊小冊子より
政夫と民子は仲の良いいとこ同士だったが、政夫が十五、民子が十七の頃には、互いの心に清純な恋が芽生えていた。
しかし民子が年上であるために、重いは遂げられず、政夫は町の中学へ、民子は強いられ嫁いでいく。
数年後、帰省した政夫は、愛しい人が自分の写真と手紙を胸に死んでいったと知る。
野菊繁る墓前にくずれおれる政夫・・・・・・
涙なしには読めない『野菊の墓』、ほか三作を収録。
新潮文庫の100冊小冊子より
明治の末年、グロキシニアの鉢植えをもってアトリエを訪れた智恵子嬢を"人類の泉"と讃えた恋愛時代から"東京に空が無い"と語り合った幸福な結婚生活を経て、夫人の発病、そして昭和十三年十月の永別-。
しかも死後なお募る思いを、"智恵子の裸形を残して、わたくしは天然の素中に帰ろう"と歌い、昭和三十一年四月の雪の夜に逝った詩人の、全生涯を貫く稀有な愛の詩集である。
新潮文庫の100冊小冊子より
一九五〇年七月一日、「国宝・金閣寺焼失。放火犯人は寺の青年僧」という衝撃のニュースが世間の耳目を驚かせた。
この事件の陰に潜められた若い学僧の悩み-
ハンディを背負った宿命の子の、生への消しがたい呪いと、それゆえに金閣の美の魔力に魂を奪われ、ついには幻想と心中するにいたった悲劇・・・・・。
三十一歳の鬼才三島が全青春の決算として告白体の名文に綴った不朽の金字塔。
新潮文庫の100冊小冊子より
生真面目なサラリーマンの河合譲治は、カフェでみそめて育てあげた美少女ナオミを妻にした。
河合が独占していたナオミの周辺に、いつしか不良学生たちが群がる。
成熟するにつれて妖艶さを増すナオミの肉体に河合は悩まされ、ついには愛欲地獄の底へと落ちていく。
性の倫理も恥じらいもない大胆な小悪魔が、生きるために身につけた超ショッキングなエロチシズムの世界。
新潮文庫の100冊小冊子より
人はいかなる時に、人を捨てて畜生に成り下がるのか。
中国の古典に想を得て、人間の心の深奥を描き出した『山月記』。
母国に忠誠を誓う李陵、孤独な文人・司馬遷、不屈な行動人・蘇武、三者三様の苦難と運命を描く『李陵』など、三十三歳の若さでなくなるまでに、わずか二編の中編と十数編の短編しか残さなかった著者の、短かった生を凝縮させたような緊張感が漲る名作四編を収める。
新潮文庫の100冊小冊子より
単に、人生を描くためなら、地球に表紙をかぶせるのが一番正しい-
誰もが無頼派と呼んで怪しまぬ安吾は誰よりも冷静に時代をねめつけ、誰よりも自由に歴史を嗤い、そして誰よりも言葉について文学について疑い続けた作家だった。
どうしても書かねばならぬことを、ただその必要に応じて書きつくすという強靭な意志の軌跡を、新たな視点と詳細な年譜によって辿る決定版評論集。
新潮文庫の100冊小冊子より
恋をしたのだ。
そんなことは、全くはじめてであった。
青年の独白から始まる『ダス・ゲマイネ』。
かばんひとつさげて、その峠を訪れた。
私は富士に化かされた。(『富嶽百景』)。
朝、眼を覚ましてから寝床に入るまで、少女の心理を鮮やかに捉える『女生徒』。
そして、命を賭けた友情をきりりと描いた永遠の名編『走れメロス』。
鬼才の魅力が、万華鏡のようにきらめく短編集。
新潮文庫の100冊小冊子より
「人買い」のために離れ離れになった母と姉弟の受難を通して、犠牲の意味を問う『山椒大夫』
弟殺しの罪で島流しにされる男と、それを護送する同心との会話から安楽死の問題をみつめた『高瀬舟』・・・・。
いち早く医学者としてドイツに留学し、ヨーロッパに触れた文豪・鴎外の世界観、人生観をうかがうのに不可欠な、全12編の短編集。
詳細な年譜付き。
鴎外がよくわかる一冊。
親譲りの財産で、無為徒食の生活をしている島村は、雪深い温泉町で芸者駒子と出会う。島村は許婚者の療養費を作るため芸者になったという、駒子の一途な生き方に惹かれながらも、ゆきずりの愛以上のつながりを持とうとしない--。冷たいほどにすんだ島村の心の鏡に映される駒子の烈しい情熱を、哀しくも美しく描く。川端文学の美質が完全な開花を見せた不朽の名作である。
親友を裏切って恋人を得たが、親友が自殺したために罪悪感に苦しみ、自らも死を選ぶ孤独な明治の知識人の内面を描いた作品。鎌倉の海岸で出会った"先生"という主人公の不思議な魅力にとりつかれた学生の眼から間接的に主人公が描かれる前半と、後半の主人公の告白体との対象が効果的で、"我慢"の主題を抑制された透明な文体で展開した後期三部作の終局をなす秀作である。
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